Archive for 小説

駿河台の記者たち53

駿河台の記者たち[53]

長瀬千年・作

 

夏から秋の学習


 志朗は自宅近くから市電に乗った。長良川を渡った忠節橋で下車した。右方向に、小高い丘が見える。戦国時代の齋藤道三が隠居した鷺山城跡だ。その後方に長良橋と金華山、その頂に岐阜城が街を見据えている。 Read more

駿河台の記者たち52

駿河台の記者たち[52]

長瀬千年・作

 

夏から秋の学習


「この本屋、これからも父ちゃんと母ちゃんで続けるの?」
「それはねぇ。そのうち満輝と嫁の美与子が名古屋に転勤願いを出して、ここから勤めに出てくれるというから、安心してるの。やっぱり長男はいざという時、頼りになるもんねぇ」 Read more

駿河台の記者たち51

駿河台の記者たち[51]

長瀬千年・作

 

夏から秋の学習

 準急「東海」は東京を出て、間もなく5時間。志郎はさすがに腰のあたりに痛みを覚え、立ち上がって大きく両手を広げた。名古屋を離れて木曽川を渡ると、ふるさとの岐阜だ。前方に見慣れた金華山と、山頂付近の岐阜城がぼんやり浮かんだ。 Read more

駿河台の記者たち㊿

駿河台の記者たち[50]

長瀬千年・作

 

夏から秋の学習


 60年安保は終焉(えん)した。それはあたかも挫折と倦怠の中で、満ち満ちた波が一気に引いていく海を、ぼんやりと見ているふうでもあった。しぼんだ世の中はこれから、再び満ちることがあるのか。言いようのない空虚の中で、志朗は東京駅から準急「東海」で親元の岐阜へ向かった。
Read more

駿河台の記者たち㊾

駿河台の記者たち[49]

長瀬千年・作

 

国会突入
19
 この安保特集は夏休み中だから、印刷は最低の1000部となった。会室に戻って、皆で新聞を見始めたときだった。
「あれっ、この『反対制運動への提案』の大見出し、『反体制運動』の間違いだろう」
 東大大学院生の原稿の見出しに、誤りを見つけたのは取材部長の伊田だった。
Read more

駿河台の記者たち㊽

駿河台の記者たち[48]

長瀬千年・作

 

国会突入

18
 志朗はやるせない思いで、夏休みながら最後の中大新聞発行に取り組んだ。建てページは5月の大型連休中と同様、表裏の2ページ建て(定価5円〉である。紙面スペースに制約はあるが、曲がりなりにも〈安保総括特集〉をめざした。
Read more

駿河台の記者たち㊼

駿河台の記者たち[47]

長瀬千年・作

 

国会突入

17
 さすがに志朗も、うんざりした。マルクスもレーニンもトロツキーも、まるで知らないノンポリの志朗だが、少なくとも三派に分裂した彼らは、安保闘争でそれぞれ先頭に立って、学生たちを国会デモに導いていた。国の行く末を憂える姿は純粋で、人々に勇気を与えた。
Read more

駿河台の記者たち㊻

駿河台の記者たち[46]

長瀬千年・作

 

国会突入

16
 全学連大会は予定どおり、文京区春日町の文京公会堂で始まった。初日の開会直前、志朗は会場前で意外な人物を目撃した。
「あっ、君、岐阜の高校同級の尾川君じゃないか。確か名古屋工大に行ったはずだがー」
Read more

駿河台の記者たち㊺

駿河台の記者たち[45]

長瀬千年・作

 

国会突入
15

 その2日後は、新執行部の第1回中執会議である。〈新安保〉の自然成立から、まだほんの一週間。それなのに、これからの重点活動の中から〈反安保〉は消え、代わって〈学内問題〉が前面に押し出された。 Read more

駿河台の記者たち㊹

駿河台の記者たち[44]

長瀬千年・作

 

国会突入

14
 しかし、そのまま幕を下ろせないのが昼自治会だ。休講中の24日から2日間、予定されていた定期連合自治会総会が設定されていた。執行部の招集に応じ、各学部の自治委員130人が出席した。
Read more