駿河台の記者たち㊻

駿河台の記者たち[46]

長瀬千年・作

 

国会突入

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 全学連大会は予定どおり、文京区春日町の文京公会堂で始まった。初日の開会直前、志朗は会場前で意外な人物を目撃した。
「あっ、君、岐阜の高校同級の尾川君じゃないか。確か名古屋工大に行ったはずだがー」

「そうだよ。そう言う君は流君。君は全学連主流派なのか」
「いや、中大に入り、大学新聞の記者として取材に来たんだ」
「そうか、僕は日共系の反主流派を支持している。主流派に数で打ち負けないよう、名古屋の仲間と出て来たんだ」

 2人がそんな会話を交わしているとき、会場前を埋めていた反主流派が動き出した。ブント(共産主義者同盟)指導下の主流派の大会をボイコットし、近くの東京教育大で独自の大会を開くためだった。

 この日、その反主流派は〈全自連(全国学生自治会連絡協議会)〉を発足させた。また、第3勢力とされる革共同(革命的共産主義者同盟)派も単独会議を開き、全学連はこのとき完全に3つに分裂した。

 単独で取材する志朗にとっては、思わぬ事態となった。互いに会場の近い主流と反主流を、相互に行き来して取材し、革共同の内容はあとから、夜自治会のその派の中執から聞くことにした。

 3つに分かれた大会は、いずれも自派のみの”翼賛大会”である。互いに他の2派を、〈分裂の元凶〉と決めつけた。
 たとえば、主流派―。「共産党・社会党など国民会議の日和見主義が、安保新条約の成立を許した。だが、全学連の激しい戦いが労働者を引き付け、反動政治粉砕への可能性を示した」

 一方の反主流派は、前年11月と6・15の国会敷地内突入を極左冒険主義と否定し、自派を「国民会議の統一のもと徐々に行動を広げ、人民大衆を大きな戦列に加えて一歩前進させた」。

 さらに、世界革命をめざすトロツキスト系の革共同は―。「我々は労働者の中に入り、6・22ゼネストなど独自に支援して、労働者を闘争に導いた」
〈なんだ、これは?〉  

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