駿河台の記者たち㊺

駿河台の記者たち[45]

長瀬千年・作

 

国会突入
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 その2日後は、新執行部の第1回中執会議である。〈新安保〉の自然成立から、まだほんの一週間。それなのに、これからの重点活動の中から〈反安保〉は消え、代わって〈学内問題〉が前面に押し出された。
①秋の大学理事改選に対し、学園民主化の視点で取り組む
②長引く後楽園校舎建設に対し、建設推進を要求
③青年像建立運動を支援
④応援部活動を民主化―などである。

 反主流派これまで、ブントの前執行部を〈極左冒険主義〉と批判してきたから、新執行部となって大学内の課題にシフトを敷いたのは、当然の帰結かもしれない。しかし、ついこの前の〈安保闘争〉は何だったのか、と志朗は寂しかった。

 三津端新委員長は、胸を張って訴えた。
「秋の大学理事の改選後は、大学の憲法である基本規定の改正問題があり、来年度には授業料値上げの動きも予想されます。我々は学園民主化に本気で取り組み、わが身を削る戦術として、新たに〈ハンスト〉も考えたい」

 ハンスト? 初めて耳にした言葉だ。志朗は勝手に、全面ストではなく、緩やかな半分のスト~と解釈した。志朗のこの〈知ったかぶり〉が、このあと恥ずかしい失敗を招くことになる。

 7月1日から、そのまま夏休みに入った。だが中大新聞の志朗たちは、まだ7月の1旬目の新聞を発行しなければならない。一連の〈安保闘争〉に対し、紙面でそれなりに記録しておく必要があるからだ。

 さらにその前に、4日から文京公会堂で全学連第16回定期大会も開催される。自治会担当の志郎たちは、取材に出向かなければならない。キャップの今図が、志朗に言った。
「長良君、勉強のためだ。今回の全学連、君1人で取材してみてくれ」

 1年生の自治会担当はもう1人、富山県出身の玉川がいるが、急いで帰郷する用事があるらしく、すでに姿がない。志朗としては酷暑の夏休みに、1人で全学連大会の取材とは、いかにも荷が重すぎる。一瞬、今図キャップはなぜ取材からはずれるのか、いぶかった。

 しかし、安保闘争直後の全学連大会の取材を任されることは、それだけこれまでの活動の実績を認められた、いう解釈も成り立つ。ここは我慢のしどころ、と志朗は持ち前のプラス思考で引き受けた。

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