駿河台の記者たち㊲

駿河台の記者たち[37]

長瀬千年・作

 

国会突入

 そんな矢先の7日と8日、夜自治会の定期自治委員総会が開かれた。志郎が山田委員長に尋ねた。
「どうして、こんな時期に?」
「昨年末の総会で決まっていた日程だから、仕方ないのさ」

 総会の中で行動方針や役員改選では、山田委員長再選など原案どおり可決。その中で15日の安保阻止の最終局面をどう戦うか、で緊急動議が出された。その結果、午後5時から全学ストを実施し、そのあと国民会議の統一行動に参加する案を賛成多数で可決した。

 夜間部ながら、全学ストとは穏やかでない。志郎は翌日一番で、昼自治会の動きが気になって訪れると、こちらの定期総会は24、25日だという。新安保が自然成立するあとである。

 そんな時、主流派の活動家・石居紘基(法1)が、志郎に声を掛けた。後に昼自治会委員長になる男だ。
「おい、ブルシン記者。君のことだよ」
「えっ?」
「中大新聞はブルジョア新聞だから、ブルシンと呼んだのさ」

 ブルジョアとは資本家階級のことで、対語がプロレタリア。彼が言うには、中大新聞は学生(=自治会か)を存立基盤にした学生新聞ではなく、資本家による商業新聞だ、という一種の皮肉である。

 確かに指摘されれば、そのとおりかもしれない~と志郎は思った。入学して2ヵ月半だが、これまでの1面トップ記事は、▽大学入学式▽安保阻止第15次行動(全学連が分裂)▽由木村(現八王子市)校地を第1次契約▽由木村校地、大学発展へ遠大な計画▽海外留学へ6教授決まる▽民主主義擁護へ教員有志が声明―という具合だ。

 安保闘争が日ごとに激化する中、自治会関連がトップになったのは、4・26国会デモで全学連が主流・反主流に分裂した時だけである。他の大学新聞は、たとえば早稲田、東京教育、京都、同志社などは、一面から最終面まで安保闘争の記事ばかりである。

 なぜ日米安保改定は許せないのかから始まり、ほとんどが一定の会派(セクト)に与(くみ)し、他のセクトを糾弾する紙面が多いのだ。

 これに対し中大新聞は、偉そうに言えば、高みから学内を見回し、〈客観報道〉に徹する立場に立っている。どの組織にも片寄らず、すべての事象に是々非々で臨む。つまり、その手本は、日本の朝・毎・読など日刊紙である。

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