駿河台の記者たち㉝

駿河台の記者たち[33]

長瀬千年・作

 

国会突入

 だが、自治会担当の志郎らは早朝から、国民会議統一行動の国会デモの取材である。志郎は雨の中、昼自治会主流派の5百人と、全学連主流派に合流した。新安保強行採決で学生たちは殺気立ち、初めて参加した日本女子大など女子たちも、びしょぬれになって「安保粉砕!」を叫んだ。

 先頭集団は国会前で、何度も雄たけびを上げて正門突破を図る。しかし、警官隊の厚い壁は揺るがない。
「首相官邸へ行こう」
 午後六時半、リーダーの掛け声に呼応し、一部が警備の隙を突いて官邸内に飛び込んだ。

 怒号の中でたちまち警官隊と乱闘になり、血を流す学生が続出。デモ隊はプラカードや靴、雨傘、石を投げて応じたが、学生たちは約5分で押し出された。一連のこのデモで、中大の文1の男子ら2人が検挙され、法3の男子ら3人が1ヵ月前後ほどの重傷を負った。

 志郎はこの日、国会正門前で新聞各社と同じように装甲車の上で取材中、警察官から引きずり降ろされた。
「中大新聞の記者です。なぜ僕だけ?」
 腕章を見せて抗議したが、無視された。

 取材を終えて志郎が新聞学会の会室に戻ると、英字新聞の白門ヘラルド記者2人が訪れていた。彼らは旧チャペルセンター前から、衆院第1議員会館前へ移動中、通用口で職務質問され、通行を拒否されたという。

「腕章を見せたのに、『許可していない』の一点張り。この事実、中大新聞でも書いてよ。警視庁に一矢報いたい」
「いいですよ」  

 志郎は自らも装甲車の上から引きずり降ろされた事実と、ヘラルドの二人の話を合わせ、中大新聞に不当な取材妨害として、国会デモとは別の記事に仕立てることにした。

「警視庁に電話して、責任者の言い分も談話として載せるんだぞ」
 事実関係について、双方の言い分が異なる場合は、相手からも取材して掲載するのが、客観報道のイロハと教えたのは、編集長の優内であった。

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