駿河台の記者たち㉖

駿河台の記者たち[26]

長瀬千年・作

 

中央大学新聞


 次いで2年生の今図が▼安保阻止の5・14統一行行動に向け、昼・夜自治会の各討議内容とスケジュール▼青年像建立資金へ寄付1件(5千円)を報告した。

 青年像資金の寄付とは、 駿河台キャンパスの殺風景な中庭に、 シンボル像を建立するための学内キャンぺーン。始まったのは2年前、中大新聞が創刊500号記念で学生歌の歌詞を募集。1席入選の学生(法2)が賞金1万円を基金にし、募金100万円を目標に青年像の建立を呼びかけたのだ。

 最後は伊沙山。4年生らしく就職戦線の動きとして、人事部から得た会社説明会の日程だった。 さらに付け加えた。
「コラム『波紋』は、おいらが書くよ。テーマは、春のうららに揺れるわがキャンパス。大学移転計画も視野に入れた、一種の恨み節をね」

「先輩のご出場、感謝します」
 これでどうやら、一面は埋まったようだ。入会したばかりの新人、特に1年生は聞くことすべてが初めてだから、終始、目を白黒させるばかりだ。

 それにしても▼大学移転問題▼応援団の暴力行為▼5・14安保闘争の取り組み▼青年像の寄付▼学生の大相撲入り▼就職の会社説明会日程と、学内の各分野からこれだけ多彩なニュースを集めてくるとは。しかも10日の間に、わずか4人で。八面六臂(ぴ)とも言える新聞学会の活動ぶりは、もはやセミプロ以上ではないか。志朗ら新人はただただ、恐れをなすほかなかった。

「次は2面だね。大原光憲(法学部)助教授の『李承晩政権独裁の現代的様相』は、予定通りの原稿受け取りでいいですね」
 学内の助教授に長文の原稿執筆を依頼し、その受取日の確認である。

 李承晩は戦後、朝鮮の独立解放促進運動で政敵を次々に抹殺。韓国の初代大統領になったが、戒厳令下の65年3月の大統領選で不正が問題化。糾弾する学生の決起〈4月学生革命〉で死者186人を出し、李承晩は4代目大統領を未就任のまま下野した。志朗らが編集会議中の、たった7日前の国際的大事件である。

 安保反対の4・26デモで、全学連主流派が国会前で装甲車を乘り越える時、〈李承晩独裁政権、崩壊〉のニュー スが会場に伝えられ、志朗らは韓国の学生たちに〈万歳〉のエールを送った。

中大新聞はそれらを見透かすように、すでに李承晩の独裁の様相について、政治学の中大助教授に原稿を依頼していたのだ。優内編集長らのやり取りを聞きながら、志朗らはその見識にまた驚いた。

―――つづく=毎週水曜日に更新します

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