駿河台の記者たち⑳

駿河台の記者たち[20]

長瀬千年・作

 

中央大学新聞

 掲載されている2枚の写真が、またすごい。1枚は「装甲車を乗り越える本学自治会幹部」の説明で、学生数人が懸命に突破する様子が真正面から捉えられている。手前には警官の後ろ姿も見える。志朗も乗り越えた、あの装甲車である。

 もう一枚は、「私服の警官に捕らえられる藤沢慶久君」の説明。 両側から腕をつかまれ、歯を食いしばり無念そうにカメラをにらむジャンパー姿が、志朗の目を釘づけにした。テレビ・ドラマかと思うほど、ドンピシャリのタイミングである。

 本職の新聞カメラマンも、顔負けの2枚というほかない。それにしても国会デモの取材中、わが大学集団の行動に目を注ぎ、カメラで狙い続けていた結果に違いない。容易ならざる中大新聞の記者魂に、志朗は唸った。

 紙面づくりにも、驚かされた。1面トップの前文の末尾に、丁寧にも「関連記事は2面に」とある。まるで一般紙と同じ編集手法だ。その2面のトップ記事は、大きく紙面を割いた国会デモのルポだ。「警官・右翼と乱闘/反主流は整然と請願」の見出しで、主流派と反主流派の行動を丁寧に追っている。

 さらに、取材記者の雑感ふう解説記事もある。「成功した焼香デモ/評価は主流派よりも大」と、反主流派に肩入れしたような見出しも、ご愛敬だ。志朗は自治会の流れのまま主流派デモに追随したが、新聞は〈お焼香デモ〉と揶揄(やゆ)される反主流派に同情的。弱い立場への判官びいきか、と志朗は感じた。

 さらに、志朗が国会デモの記事で教えられたのは、中大の夜間部自治会も200人を動員したこと。夕方6時から明大商友会の100人と、国会請願デモを実施したのだ。活発に活動している夜自治会の存在もさることながら、そこまで目配りして報道している中大新聞に、もはや「参りました」と頭を下げるほかない。

 新聞学会の入会試験でもし面接もあるのなら、たったいま読んだ感想を話そう~と志朗は考えた。

 それにしても、中大新聞とは一体どういうサークルなのか。 4・26国会デモの記事を、わずか4日後に編集して発行し、しかも自分たちで立ち売りとは~。10日ごとに1回、4ページの新聞を発行するために、何人の会員がどう活動しているのか。志朗はやや恐れをなし、同時に強い好奇心に誘われる心地で、新間学会の入会試験に臨んだ。

 試験会場は、授業の無い空き教室だった。集まった学生は10数人。単なるサークル活動の入会試験のはずなのに、教室内はまるで入学試験のときのような緊張感が漂っていた。

「90分間で一般常識と英語間題、作文を仕上げてもらいます。出来上がった人から順番に、新聞学会の会室で面接試験を受けてください」

 スーツ姿の新聞学会員が、 規律正しい表情で試験の要領を説明した。筆記考査のほかに面接試験まであるとは、企業の入社試験並みではないか。志朗の緊張は高まった。

―――つづく=毎週水曜日に更新します。

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