波紋

 庭先の沈丁花(ちんちょうげ)が咲き春の訪れを確信する。所在無き冬の寒さも、淡い紫に縁どられたリニン色の花弁が忘れさせてくれるようだ◆沈丁花の花言葉は「栄光」「歓楽」。新入生にとっても上級生にとっても4月を迎えるにあたってふさわしい言葉かもしれない。新しい友達、新しい講義、新しいサークル…。新しい何かは、しばらく構内を包み込み景色まで変えてしまう。6月パニックもいつの間にかトーンを上げて行き、この時期はとにかく希望が多いように思われる◆希望の裏返しか、環境の変化も大きくなる。その変化は往々にして自己の内面に跳ね返ってくる。立ち振る舞いの仕方、自律の難しさ、自己評価と他己評価の乖離…様々な悩みが漠然として立ちはだかる。月並みな意見だが、5月病にかからない為には休む事が大切だ◆実は、日本に咲く沈丁花は殆ど雄株なので先ず実はならない。その花が結実しないのは、花言葉に比してずいぶん皮肉に思える。しかし、日本においてもごく稀に実をつける場合があるそうだ。その実は艶やかでトマトのように瑞々しく実る。こう形容するとその実を口にしてみたくなるが、実は辛く有毒で食す事は出来ない◆下宿に咲く沈丁花が雌株だったとして実がなるのは6月。桜の季節から初夏を思うのはどことなくいじらしいが、浮足立つのも悪くはない。

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