記者通信(1237号)

 「イナゴ食べるんでしょ?」私が長野県出身だと明かすと、こう返されることがある。
 幼稚園に通っていた頃先生から袋を渡されイナゴをとってこい、と畑に駆り出された。私は大の虫嫌いだ。そんな私が生きたイナゴを鷲掴みできるわけもなく、友達に自分の分の袋を押し付けたのを覚えている。生きたイナゴを袋いっぱいに、私たちは幼稚園に帰る。すると給食のおばちゃんが調理を始め、その日の給食にそれらが並ぶのだ。虫嫌いではあったが私は何の疑問もなく食べていた。むしろおいしいとすら感じていた。それを食べるのが一部の地域だけであるなんて考えたこともなかった。

 先日新聞を読んでいて気になる記事を見つけた。国連食糧農業機関(FAO)が昆虫は栄養価も高く採集も容易で世界の未来のために理想的な食糧になるとし、昆虫食を推進していく報告書を提出したという。驚くことに、昆虫はタンパク質の含有量や質が肉や魚よりも高く、食物繊維・鉄分・亜鉛などの普段摂取しにくい栄養分も豊富に含まれているらしい。また一定の供給量が維持でき、餌を与える必要がないから環境にも優しいという。

 周知の事実ではあるが世界で爆発的に人口が増加している。増え続ける人類の食糧をいかに賄っていくかは、いずれ私たちが直面する問題なのだ。「食糧」の範囲を広げるのは手っ取り早く供給量の増加につながるから昆虫食は理にかなっていると考える。世界には昆虫食を一般とする民族も存在するのだ。(食事の傍らにこの記事を読んで下さっている方がいるかもしれない。具体的な料理名の列挙は遠慮しておこう)
近い将来、食糧が減り、日本政府が「昆虫食推進政策」を採択する日が来るかもしれない。「昆虫のおいしい食べ方」なんてレシピ本が村上春樹を抜いてベストセラーになる日が来るかもしれない。あなたがイナゴを食べられるのならどうぞそのまま気兼ねなく摂取してほしい。もし食べたことがないのなら、佃煮から試してみるのがよい。

 筆を擱く前に、ここで一つお詫びを申し上げておきたい。ここまで散々昆虫食を勧め、虫嫌いたちを恐怖のどん底に導いた私であるが、小学生になった頃からイナゴが食べられなくなった。東京生まれ東京育ちの従兄弟が「キモチワルイ」と禁断の一言を口に出してしまったのが今でもトラウマなのである。  (明)

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