ウイグル人権問題 抑圧と苦難の日々

  「私が刑務所から無事に出たら、世界中に『新疆』の人権状況を宣伝する。そして、東トルキスタンの鍵をあなた達から奪っていく!」

 これは、ノーベル平和賞受賞者候補にも挙げられたウイグル人女性、ラビア・カーディルの獄中での言葉だ。
中華人民共和国の北西部に位置する、いわゆる「新疆ウイグル自治区」をご存じだろうか。かつての東トルキスタンで、現在は中国の少数民族の一つとされている、ウイグル族の自治地域だ。新疆は、中国当局にとって、経済的にも防衛的にも要所となっている。地下資源が豊富で、様々な隣国との国境に位置するためだ。

 しかし近年、ウイグル人と中国当局との間に激しい摩擦が起きている。独立や待遇改善を願うウイグル人と、それらを許さない中国当局との対立である。ウイグル人たちは、信教の自由や母語を使用する権利が尊重されない、或いは財産を持つ者が不当に逮捕される、などと中国当局の扱いに反発し、「東トルキスタン」の独立を願う抗議のデモや、暴動を起こしている。

 一方、様々な内政問題に悩んでいる中国当局は、それらの独立運動を抑えようと躍起になっている。特にいま、問題となっているのは、中国当局のウイグル人に対するやりすぎとも取れる制裁だ。新疆の悲惨な人権状況は、世界中から危機感を持って見つめられている。

 亡命ウイグル人達の話によると、ウイグル人がひとたび中国当局から「国家分裂主義分子」とみなされれば、政治犯として監視され、拘束され、不当な裁判で投獄され、こちらが聞くに堪えないようなひどい拷問を受け、さらには、少なくない人が処刑されるそうだ。亡命しないようにと政府からパスポートを奪われることすらあるという。

 「ウイグル族の人権問題は深刻だ。暴力に頼らずに民族自決に努めている」と述べたのはドルクン・エイサだ。彼は世界ウイグル会議の事務局長である。一方で中国当局は、「ゴタゴタを起こして国家を分裂させようとするいかなる行為にも断固打撃を与えるべきだ」と、徹底鎮圧の立場を崩さない。

 皆さんは、「でも、これは中国の内政問題でしょう」と思うかもしれない。しかし、日本も決して無関係ではないのだ。
 
 今年の5月、東京都内で世界ウイグル会議の代表大会が開催された。後に中国が不満を表明したが、日本は世界ウイグル会議に出席する亡命ウイグル人達にビザを発行したのだ。日本は、ウイグル族の人々による自由を求める非暴力の活動に対して、支援する姿勢を言外に見せているといえる。

 一方で、日本におけるウイグル問題は「“敵の敵は友”的な発想から『単なる中国を叩くための材料』として扱われることも少なくない」と、『中国を追われたウイグル人』の水谷尚子氏は憂えている。ウイグル問題が単に中国嫌いの促進に使われるのでは何の解決にもならない。ウイグル人の人権を守るために、私たちには何ができるのだろうか。 

 冒頭の女性、ラビア・カーディルは、現在アメリカで暮らしている。国連人権委員会、アメリカやヨーロッパ各国の政府や議会、アネムスティ・インターナショナルなどからの圧力や嘆願を受けて、中国政府から釈放されたからだ。
 世界中の人が新疆の人権状況を知ること、そして団結して改善を促していくことで、状況は少しずつ変わっていくに違いない。
        

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