岡田克也副総理講演会

 去る6月2日、中央大学新聞学会の主催による学内講演会が催され、野田佳彦内閣で副総理を務める岡田克也衆議院議員が招かれた。

講演テーマは「社会保障と税の一体改革を考える~『明日の安心』対話集会」。
会場となった8号館8101教室には、学生のみならず学外からも聴衆が駆け付け、報道陣の姿も多く見られた。当会では講演に先立ち岡田氏に直接お話しを伺ったので、講演内容も含めて皆さんにご紹介したい。

 

【会場の模様】
 講演会場となった8101教室は、開場時刻の15時よりも随分と前から多くの人で溢れかえっていた。304名収容の教室を会場として設定していたが、整理券の配布も20分で終了する程の人気ぶりだった。特に岡田氏は、以前から学生を主な対象とした講演会の開催を希望されていたとの事であり、今回の講演会では聴衆の殆どが学生となった為、内閣関係者の方々も非常に喜ばれたとの事である。会場には開演時刻を過ぎても多くの学生が来場し、最終的には30人以上の方が立ち見となるほどの盛況ぶりだった。

 講演会を円滑に進行させ、かつ多くの方からの質問を受けられるようにするため、当会では講演会前に繰り返し事前アナウンスを行ったが、その都度会場は静粛な状態になり、皆が耳を傾けてくれた。講演の直前には野田総理からのビデオメッセージも放映されたが、その段階から多くの方がメモを取りつつ真剣な顔で映像に集中しており、講演会への期待感がひしひしと伝わった。

 盛大な拍手の中で岡田氏が入場された後は、水を打ったように静まった厳正な雰囲気の中で講演が行われた。また講演後の質疑では、同一テーマについての質問を複数募っておき、岡田氏がそれに対しまとめて回答するという形式がとられた。中でも子育てや年金、社会保障などに関する質問が多く、その殆どが学生からのものであった。

 岡田氏が降壇された後の会場では、講演を振り返るように友人と語り始める方も見受けられたが、感想や質問をアンケート用紙に熱心に書き込まれている方もいた。退室時の混乱には特に混乱も無く、盛況のうちに講演会を終えることができたと言えよう。
 

【講演概略】
<増税の必要性>
 社会保障は基本的に国民が払う保険料で成り立っているが、それに加えて税金も投入している。社会保障費は主に年金、医療、介護、そして福祉に使われており、社会保障は高齢者の為のものと言える。
だが、高齢者の増加に伴い、保険料を払う側と年金等を受け取る側とのバランスが崩れ、税金投入が毎年一兆円規模で増加している現状がある。
そもそも日本における社会保障制度は、万事右肩上がりであった高度経済期に作られたものだ。
高度経済期終了後、民間は即座に新しいやり方へと舵を切ったが、国は旧来の発想から抜け出せずに制度改革を遅らせ、気付いた時には大変な借金を抱えることになってしまったのである。
また、少子化と平均寿命の延びが想像以上のものになり、税収が確保できない状態が続いているのが現状だ。

<増税分の使途>
国が使う分と地方が使う分とがあるが、前者については社会保障に全額使うことを法律で確保した。
増税分の5%の内、1%は子ども・子育て対策等の新規事業に、4%は現在の制度を安定的に維持する用途で使われる。

<子ども・子育て支援>
先進国の中で、日本は子育てをしながら女性が働き続けることが難しい国だ。
特に大都市では待機児童が多く存在しており、保育所が確保できるまで女性は働くことが出来ず大変苦労している。
働く気持ちと能力が有るのに働けないというのは、社会にとっても個人にとってもマイナスだ。
そういった現状を改める為、例えば幼稚園と保育所を一元化し、総合こども園を創設するなどといった対策を検討している。

<年金制度の改善>
現在、年金には国民年金、共済年金、厚生年金の3つがある。
国民年金に関して言えば、その給付の財源は半分が税金であってこれは人口変動にも左右されないことから、結果的には納めた保険料以上の年金を受け取る事が可能となるため、年金保険料は納付した方が「得」である。
また、年金制度の新設が話し合われているが、当面は現行制度の拡充に努める。
例えば、低年金ないし無年金対策の強化、パート労働者への厚生年金適用拡大、そして共済年金や厚生年金を一元化し、官民の年金格差を解消することである。

<行政改革の成果>

平成24年度は国家公務員の人件費を約1割削減することに成功した。また、独立行政法人や特別会計の改革を行い、中央官庁の定期刊行物を3割削減した。今後も、行政改革懇談会や行政改革実行本部を筆頭に、更なる総人件費削減、規制・制度改革、国有資産売却、政府調達改革等の取り組みに尽力するつもりだ。
(志・谷・進)

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